羽田で日航機と海保機が衝突炎上 ― 2024年01月03日 00時46分07秒
1日の能登大地震に続き、2日も大きな出来事が起こりました。
夕方17時47分頃、千歳から羽田に向かっていた日本航空516便(A350)が着陸時に海上保安庁の双発プロペラ機MA722(ボンバルディア300型機)と衝突炎上するという大事故です。旅客機の乗員乗客は、幸いなことに全員無事でしたが海保機は乗員6名のうち、機長を除く5名が亡くなりました。
まだ事故の詳細はよくわからないのですが、テレビ・新聞で報道された情報にネットでの情報を加えて考えてみます。
海保機は管制官からタクシーウエイC5(チャーリー ファイブ)に向けてタクシーし、滑走路に入る手前でホールド(停止)するように言われていたようです。使用滑走路は34R(スリー フォー ライト)。C滑走路と呼ばれる滑走路です。ファイナルアプローチコースには日航機がいました。
通常であれば、滑走路まで5マイル以内に日航機が近づいていたら、管制は日航機が着陸するまで海保機を離陸させません。
C5というランウエイエンドから500mほどの距離にあるタクシーウエイを指定したのは、小型機の場合、離陸距離が残りの2000mもあれば十分だからです。燃料と時間を節約するために、小型機はよくこのような離陸をします。これをインターセクションディパーチャーといいます。普通はパイロットの方から管制にリクエストします。リクエストをもらった管制官は、問題なしと判断すれば「アプルーブド」と返答し、「タクシートゥ チャーリーファイブ ランウエイ スリーフォー ライト」と返します。通常は、滑走路手前でいったん停止させるので、「ホールド ストップライン」とか「ホールド ショート オブ ランウエイ」という言葉を付け加えます。
パイロットもトラフィックが怖いので、滑走路に入る前にホールドしてファイナルに進入機がいないかを念入りにチェックします。
ファイナルにいた機体が着陸すると、タワー管制官は、「ラインナップ アンド ウェイト」といってランウエイに入ることを許可し、大型機のウエイクタービュランスがおさまる頃を見計らって、「クリヤード フォア テイクオフ」と言って離陸を許可します。これらの通信の前には必ずコールサインを入れます。
例えば、「ジュリエット アルファ 1234 ウインド 310 アット 7 クリヤード フォア テイクオフ ランウエイ34R」といった具合です。パイロットの方も「クリヤード フォア テイクオフ ランウエイ34R ジュリエット アルファ 1234」と機体番号と滑走路番号を明示してリードバックします。
これが通常の手順。もしも進入中の航空機が滑走路上にトラフィックを視認した場合は、着陸できないので、ゴーアラウンドして着陸をやり直す。パイロットはランディングクリアランスが出た後も、滑走路上のトラフィックには常に注意を払っています。
今回の事故は、これらの手順を管制官も海保機も日航機も守っていれば起こらなかったはずです。どれかのチェックが抜けたから事故になったのです。
管制官の管制指示が間違っていたか、あるいはあの時間の羽田はトラフィックをさばくのに超忙しいので、早口になってしまい、パイロットが聞き取りにくい言い方になっていなかったか。パイロットは曖昧なところを「セイアゲイン」といって聞き返したか。
進入機のパイロットは滑走路上に障害物がないかどうかをしっかりと目視で確認していたのか。またグランドまたはタワーを担当していた管制官は、双眼鏡などを使った目視(夜間は空港面探知レーダー等)で、航空機の位置を確認把握していたのかどうか。
今の段階で犯人捜しをするのはよくありませんので事故調の調査を待つことにしましょう。
着陸時のウェザーをみてみます。事故が起こって45分くらい後の羽田の18時30分のMETARを掲げておきます。
風 310/7ノット、視程10キロ以上。ここまでは問題なし。
気象現象は「FU」。これは煙(SMOKE)ですね。これは事故の火災による煙でしょう。
今回の事故の原因はまだあかりません。海保の羽田航空基地に属するベテランパイロットや日航機の経験豊富なパイロットおよび羽田の管制官が上記のようなミスをすることは考えにくいのですが、どれかのチェックが抜けたのでしょう。
1つ言えるのは、羽田はラッシュ時に、トラフィックが混みすぎ。もはや人間の能力を超えてしまっているのかもしれません。
【追加情報】20230105
NOTAMが出ていて、C5の停止線にある灯火が消えていたようです。
停止線灯がないと、夜間では停止位置が極めて見えづらいです。
管制(羽田のタワー)は海保機の位置をチェックしてなかった。
日航機のパイロットは滑走路上の海保機を視認していなかった。
いくつもの原因が重なっておこった典型的な航空事故みたいですね。
夕方17時47分頃、千歳から羽田に向かっていた日本航空516便(A350)が着陸時に海上保安庁の双発プロペラ機MA722(ボンバルディア300型機)と衝突炎上するという大事故です。旅客機の乗員乗客は、幸いなことに全員無事でしたが海保機は乗員6名のうち、機長を除く5名が亡くなりました。
まだ事故の詳細はよくわからないのですが、テレビ・新聞で報道された情報にネットでの情報を加えて考えてみます。
海保機は管制官からタクシーウエイC5(チャーリー ファイブ)に向けてタクシーし、滑走路に入る手前でホールド(停止)するように言われていたようです。使用滑走路は34R(スリー フォー ライト)。C滑走路と呼ばれる滑走路です。ファイナルアプローチコースには日航機がいました。
通常であれば、滑走路まで5マイル以内に日航機が近づいていたら、管制は日航機が着陸するまで海保機を離陸させません。
C5というランウエイエンドから500mほどの距離にあるタクシーウエイを指定したのは、小型機の場合、離陸距離が残りの2000mもあれば十分だからです。燃料と時間を節約するために、小型機はよくこのような離陸をします。これをインターセクションディパーチャーといいます。普通はパイロットの方から管制にリクエストします。リクエストをもらった管制官は、問題なしと判断すれば「アプルーブド」と返答し、「タクシートゥ チャーリーファイブ ランウエイ スリーフォー ライト」と返します。通常は、滑走路手前でいったん停止させるので、「ホールド ストップライン」とか「ホールド ショート オブ ランウエイ」という言葉を付け加えます。
パイロットもトラフィックが怖いので、滑走路に入る前にホールドしてファイナルに進入機がいないかを念入りにチェックします。
ファイナルにいた機体が着陸すると、タワー管制官は、「ラインナップ アンド ウェイト」といってランウエイに入ることを許可し、大型機のウエイクタービュランスがおさまる頃を見計らって、「クリヤード フォア テイクオフ」と言って離陸を許可します。これらの通信の前には必ずコールサインを入れます。
例えば、「ジュリエット アルファ 1234 ウインド 310 アット 7 クリヤード フォア テイクオフ ランウエイ34R」といった具合です。パイロットの方も「クリヤード フォア テイクオフ ランウエイ34R ジュリエット アルファ 1234」と機体番号と滑走路番号を明示してリードバックします。
これが通常の手順。もしも進入中の航空機が滑走路上にトラフィックを視認した場合は、着陸できないので、ゴーアラウンドして着陸をやり直す。パイロットはランディングクリアランスが出た後も、滑走路上のトラフィックには常に注意を払っています。
今回の事故は、これらの手順を管制官も海保機も日航機も守っていれば起こらなかったはずです。どれかのチェックが抜けたから事故になったのです。
管制官の管制指示が間違っていたか、あるいはあの時間の羽田はトラフィックをさばくのに超忙しいので、早口になってしまい、パイロットが聞き取りにくい言い方になっていなかったか。パイロットは曖昧なところを「セイアゲイン」といって聞き返したか。
進入機のパイロットは滑走路上に障害物がないかどうかをしっかりと目視で確認していたのか。またグランドまたはタワーを担当していた管制官は、双眼鏡などを使った目視(夜間は空港面探知レーダー等)で、航空機の位置を確認把握していたのかどうか。
今の段階で犯人捜しをするのはよくありませんので事故調の調査を待つことにしましょう。
着陸時のウェザーをみてみます。事故が起こって45分くらい後の羽田の18時30分のMETARを掲げておきます。
風 310/7ノット、視程10キロ以上。ここまでは問題なし。
気象現象は「FU」。これは煙(SMOKE)ですね。これは事故の火災による煙でしょう。
今回の事故の原因はまだあかりません。海保の羽田航空基地に属するベテランパイロットや日航機の経験豊富なパイロットおよび羽田の管制官が上記のようなミスをすることは考えにくいのですが、どれかのチェックが抜けたのでしょう。
1つ言えるのは、羽田はラッシュ時に、トラフィックが混みすぎ。もはや人間の能力を超えてしまっているのかもしれません。
【追加情報】20230105
NOTAMが出ていて、C5の停止線にある灯火が消えていたようです。
停止線灯がないと、夜間では停止位置が極めて見えづらいです。
管制(羽田のタワー)は海保機の位置をチェックしてなかった。
日航機のパイロットは滑走路上の海保機を視認していなかった。
いくつもの原因が重なっておこった典型的な航空事故みたいですね。