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IT時代の人間原理2011年05月04日 02時50分15秒

THE WALL STREET JOURNALの『位置情報は「有用」=グーグル製品管理担当者の電子メール』という記事(5月 2日 17:49 JST )によると、グーグルの担当者は、ユーザの位置情報は有用かつ欠かせないものだと語ったという。

 スマートフォンやタブレット端末には、GPSが内蔵されたり、Wi-Fi基地局を利用して端末の位置を知る機能が内蔵されている。GPSを内蔵していれば、誤差10m程度、ほぼピンポイントで、地球上における位置(緯度経度)を知ることができる。
 さらに、GPSを内蔵していないiPad Wi-Fiモデルでも同様に位置を知ることができる。これは、Wi-Fi基地局のSSIDと電波強度のパターンをデータベース化したものを利用している。今や、数10mごとにといっていいくらい、あちこちにWi-Fi基地局がある。

 これらの基地局の電波を利用したジオコーディングデータは、アメリカのスカイフック社が約5億件、グーグルが約3億件も持っているという。
 これらのデータは、専用の収集車が世界を走りまわってデータを集めている。昨年は、グーグルが、Wi-Fi基地局情報とともに、セキュリティーの甘い基地局の個人データを収集していたことが問題視された。

 しかし、WSJの記事の通り、グーグルは位置情報の有用さを主張している。
 情報は、時間と位置という属性を持っており、この二つの属性が揃えば、情報の価値は格段に向上するからだ。

 物を売るとき、特定の場所に人を誘導するとき、人の流れを調べるとき。位置情報は欠かせない。
 マーケティングの流れは行動ターゲティングに向かっている。これにソーシャルグラフが加わればさらにパワーを増す。ソーシャルグラフは膨大な個人情報の関係性を表したプライバシーの塊である。

 こういった流れをさらに、拡大しようと、ディープパケットインスペクション(DPI)の導入まで検討されている。

 有用と言っても、これは商売をする方の人間にとってのものである。
 個人にとって、便利かというと、そうは言い切れない。それどころか、個人のプライバシーを大きく侵害する危険性を併せ持つのである。

 情報がすべてデジタル化され、膨大な情報の関係性が時間・位置といった情報とともに把握されるようになると、この情報を握ったものが世界を征することになる。
 果たしてこれでいいのか。しかも。、スカイフックもグーグルもアメリカの企業である。日本として、これでいいのか。

 折しも、昨日、米軍の特殊部隊がウサマ・ビンラディン氏を殺害したというニュースが流れてきた。この作戦のようすは、特殊部隊隊員のヘルメットに取り付けたカメラで撮影され、リアルタイムで、ホワイトハウスに中継されていたという。

 新しい戦争テクノロジーだと、米政府高官は賞賛しているようだが、いくら、相手がテロの容疑者とは言え、人殺しの現場を生で見るということが許されるのだろうか。

 テクノロジーの発達は、人間の「真心」や「尊厳」といったものを毀損しているとしか思えない。
 DPIや位置情報のビジネス利用など、どう考えても、一部の人間が自分たちの利益のために、魂を悪魔に売り渡しているとしか、ぼくにはみえない。

 IT時代の人間原理といったものを、みんなが考え、大切にしていかなくてはならないのではないだろうか。