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電子書籍大丈夫? 本は読み捨ての消費財ではない2010年08月05日 22時34分32秒

昨日、NTTドコモと大日本印刷が電子書籍で提携という報道があった。
ここ数ヶ月で、電子書籍に関するいくつものグループができて、まさに混乱状態だ。
凸版印刷はKDDI、朝日新聞、ソニーなどと電子書籍で提携することを発表している。
iPhoneとiPadを独占的に販売しているソフトバンクモバイルは、AppStoreのiBooksを使う。

結局は、無線データ回線というインフラが必要になるので、どこかの携帯電話会社を利用せざるをえず、ほぼ図式は出そろったことになる。
この他、アメリカにおいて電子書籍普及の先陣を切っているキンドルも日本語対応版が発表になり、どの通信会社と提携するかが注目される。イーモバイル、ウイルコム、UQ WiMaxのうちのどこかと提携することになるのかもしれない。

電子書籍端末としては、iPad/iPhone、SONY リーダー、シャープ製電子書籍端末、そしてキンドル日本語対応版。また、台湾メーカーからも、何機種も試作機が発表されている。

この他に、電子書籍の販売流通チャネルとして、日本電子書籍出版社協会の電子文庫パブリがあり、また、iBooks向けやPC向けの単発の電子書籍がある。Googleの動きからも目が離せない。

まさに乱立状態だが、消費者サイドから見れば、ドコモ・au・ソフトバンクモバイル・その他の4つくらいの、チャネルができると考えればいいのではないか。
しかし、このように流通チャネルがいくつもある状態で、紙の本と同等のサービスを行えるのだろうか。
また、再販制度は維持できるのだろうか。維持する必要はないと言うなら、そういう方向もあるとは思うが、そうなると紙の本の流通システムが崩壊するだろう。

↓ここ重要

買った電子書籍は書棚(電子書棚)に並べて、いつでも参照できるようにするのだろうが、他のチャネルで購入した本も、同じ電子書棚に並べることはできるのだろうか?
自宅の書棚のように、どの書店で買った本も、同じ所に並べておくことができないと、必要なときに必要な部分を参照できないので困る。いくら電子書籍は検索性がいいといっても、そこにない本の検索はできないのだ。

どうも、ここ数ヶ月の業界の動向を見ていると、本を読み捨ての消費財として売ることしか考えていないようにも思える。本は、資料でもあるということを忘れてはいないだろうか。
物書きや研究者にとって、本は思考したり執筆したりする際の重要な情報源なのである。一度読んだ本は、手元に置いていつでも参照できる環境が必要なのである。このような環境が電子的に実現できれば、電子書籍に移行できるが、そうでなければ、まだまだ紙の本は必要である。