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小保方晴子氏の手記に書かれていること2016年02月03日 01時10分12秒

STAP細胞の研究者である小保方晴子氏の著書が1月28日に発売された。『あの日』という、STAP細胞をめぐる騒動に巻き込まれた当事者の手記である。
一方の側の見方であるので、この手記の内容がそのままの真実であるとは言えない。
しかし、この騒動を巡っては、マスコミもネット世論も、小保方氏は悪意ある捏造の科学者であると大合唱をした。
だが、それもまた一方的なものであり、一般人を巻き込んだ小保方バッシングの前に彼女の反論はほとんど聞く耳を持たれなかった。
なので、騒ぎの熱が冷えた今、この本を契機として少しは冷静に考えてみることができるのではないだろうか。

本書には、この騒動に登場した人物たちが生々しく描かれている。
そういう意味で、科学とは離れた、人間の感情のドラマが描かれている本と言える。

若山氏など当時の理研の上司のみならず、マスコミの傍若無人な取材についても実名をあげて批判している。
たとえば、毎日新聞の須田桃子記者だ。
彼女は、小保方氏を批判した『捏造の科学者 STAP細胞事件』(2015年1月)という本まで書いている。
これがマスコミ全般の姿勢だった。世論の流れの一部は確かにこれに近かったので、時流の乗った本とは言えるだろう。

しかし、はたして捏造と断定できるだろうか。その根拠は定かではない。
小保方氏に捏造するメリットはあるのか? 無いだろう。大学院時代に、ハーバード大学系列の病院でしばらく、STAP細胞の提唱者であるバカンティ氏の元でお手伝いしてきただけの30歳の研究者である。研究者として、まだスタート地点についたばかりである。実績などほとんど無い。

こういう人は、普通、理研の研究者などにはなれない。
なのに、理研の研究者、しかもリーダー職に就いたと言うことは、だれか(あるいはどこか)の強いプッシュがあったということだろう。

こういった経験の浅い人が、我が国最高峰の研究所に来て、すぐに細胞の取り換えなどできるものではない。
さらに、共同で国際特許を申請するなど小保方氏一人の力では不可能だ。

一方で、実験内容や論文のまとめ方に杜撰な点はあった。しかし、それは研究者としての未熟さゆえのものであり、それを故意とか悪意と言うのは間違いだろう。また、万能細胞の世界的権威である笹井氏に論文を添削されれば、「こんなもんかな」とも思っただろう。彼女が反論できる相手ではない。

不思議なのは、マスコミがそろいもそろって、小保方氏が悪意をもって捏造をしたかのごとく報道した点だ。
どこをどう見て、そう判断したのだろうか。客観的に冷静に見れば、決して小保方氏だけを批判するわけにはいかないことがわかるはずだ。
小保方氏も言うように、「何か大きな力が働いていた」のだろうか。

もう一つの問題点は、マスコミ報道のせいもあるだろうが、一般人がよくわかりもしないで捏造疑惑を語ったことだ。
この事案は基本的に科学の世界の話であり、間違いだらけの論文なら、アカデミズムの世界から忘れられていってしまうだけの話だ。
科学の話を一般レベルまで下ろしてしまったため、収拾がつかないゴシップ話になってしまった。

STAP事案は、まだなにも解決していない。関係者の中には、まったくといっていいほど表に出てきて説明をしていない人もいる。
すべての関係者の話を聴かない限り、正しい判断はできない。
今の段階で、小保方氏を悪者扱いするのはとんでもない名誉毀損であると思う。