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調布事故機マリブは離陸時にフラップを使ったのか?2015年08月03日 23時37分05秒

調布飛行場で事故をおこしたマリブミラージュは、最大離陸重量オーバーで離陸した可能性が高い。
計算してみると、次のようになる。

Max Takeoff Weight・・・・・・・4340lb
Basic Empty Weight・・・・・・・3156.5lb
Fuel(Max120Gal/720LBS) ・・・・・・・612lb(102gal)前回約40分のフライトをしていたため18Galマイナス。
Pilot and Passenger 5人・・・・・・・770lb(一人70kgとして)
Baggage(手荷物)・・・・・・・ 0lb(体重に含むとする)

これから、搭載可能重量は約1184lb。搭乗者と搭載燃料で1382lbとなる。つまり、離陸重量は4538lbで最大離陸重量を198lb(90kg)オーバーしている。

最大離陸重量を超えて飛ぶことは航空法違反である。

次に、離陸滑走距離(グランド・ロール)だが、最大離陸重量の場合、34℃の外気温、無風、標高0メートル飛行場(調布飛行場の標高は139feetなのでほぼシーレベルと考えてよい)では約600m。(参考:20℃の場合は約520m)(Operating Handbook, PERFORMANCEより)

600mの地上滑走が必要だと、調布飛行場の滑走路は800mだから、残り200mしかない。実際、離陸のようすを撮影したビデオを見てみると、ランウエイ35側の接地帯標識(滑走路末端から150m)の上で浮揚している。この場所までは17端から650mの距離だ。

離陸条件が悪いときは、ショートフィールド・テイクオフという方式で離陸する。
離陸滑走開始前にフラップを20度まで下ろし、フットブレーキを踏んで、フルパワーまでパワーを上げてからブレーキを離し、通常の78ノットよりも遅い69ノットで浮揚する。その後80ノットで上昇し、フラップとギアを上げてから通常のクライムを行なう。(補足:パイパーマリブのフラップは、10度、20度、36度の3段階に分けて下ろすことができる)

ショートフィールド・テイクオフでは、最大離陸重量で34℃の場合のグランドロールは約400mですむ。

 今回は、最大離陸重量をオーバーしていたから、この数字通りにはいかないが、ショートフィールドテイクオフで離陸していれば、もう少し高度が稼げたのではないだろうか。

 もちろん、最大離陸重量を超えているから離陸不可なので、仮定の話ではあるが。

 今回の事故機は、機長が離陸重量を把握していたかどうかに加えて、離陸の際、フラップを使っていたかどうかも事故調査のキーポイントとなる。